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システム開発のスケジュールや全体の流れ・作り方のポイントを解説

システム開発プロジェクトの成功には、適切なスケジュール管理が不可欠です。スケジュールを明確にすることで、プロジェクトの規模や複雑さに関わらず、進捗を把握し、リスクを最小限に抑えることができます。

本記事では、システム開発のスケジュールの重要性や作成方法、管理のポイントについて詳しく解説します。

システム開発のスケジュールの全体的な流れ

システム開発のスケジュールは、大きく分けて、要件定義、設計、プログラミング、テスト、リリースの5つの工程から構成されます

設計工程は、外部設計と内部設計に分かれており、同時並行で進められるケースが多いです。外部設計ではユーザーから見える部分の仕様を決定し、内部設計ではシステムの内部処理の詳細を決めていきます。

テスト工程は、単体テスト、結合テスト、総合テスト、運用テストの4段階で構成されています。

以下の表は、各工程の概要と期間の目安をまとめたものです。

大工程小工程概要期間の目安
要件定義要件定義システムの目的や解決したい課題を明文化する必要な機能、仕様などをリストアップする1カ月程度
設計外部設計システムの構造やデザインなどユーザーから見える部分の仕様を決める1カ月程度
内部設計プログラムの構造や処理などシステムを動かす内部の処理の仕様を決める1カ月程度
プログラミングプログラミング設計書に基づき、プログラミングを行う1~3カ月程度
テスト単体テスト個別のプログラムが上手く動作するかを確認する2週間~1カ月程度
結合テスト複数のプログラムを組み合わせて上手く動作するかを確認する2週間~1カ月程度
総合テスト実環境と同じ設定で動作するかを確認する2週間~1カ月程度
運用テスト本番環境でユーザーが実際に使用しながら動作を確認する1カ月程度
リリースリリース全てのテストをクリアし、新しいシステムへ移行する

システム開発のスケジュールの重要性

スケジュールの適切に管理が、プロジェクトの成功に欠かせない理由としては、以下が挙げられます。

  • プロジェクトの全体像と進捗の把握のため
  • トラブルへの迅速な対応のため
  • 関係者の認識の共有のため
  • リソースの適切な配分のため

一つずつ解説していきます。

プロジェクトの全体像と進捗の把握のため

システム開発プロジェクトを成功させるためには、依頼する側と開発側の双方がスケジュールの全体像を理解し、共通認識のもとで進捗を管理することが重要です。適切なスケジュール管理により、納期に間に合わないなどのリスクを回避し、計画通りに作業が進んでいるかを確認できます

また、スケジュールを立てる過程で、不要な作業や省略できる工程を見つけることもできるでしょう。これにより、無駄のないプロジェクト進行が可能となり、効率的な開発につながります。

トラブルへの迅速な対応のため

システム開発プロジェクトでは、予測していないトラブルが高い確率で発生します。そのような状況下でも、適切なスケジュール管理があれば、迅速かつ効果的な対応が可能となります。

具体的には、問題が発生した段階や、解決のためにどの工程まで戻る必要があるのか、どの工程を変更すればいいのかを素早く判断することが可能です。これにより、適切かつ迅速なリカバリーが可能となり、プロジェクト全体への影響を最小限に抑えることができます

関係者の認識の共有のため

システム開発におけるトラブルの多くは、関係者間のコミュニケーション不足や認識の齟齬によって引き起こされます。適切なスケジュール管理は、このような事態を予防する効果があります。

スケジュールを立てて作業範囲や納期などを可視化することで、関係者全員の認識をすり合わせることが可能です。これにより、プロジェクトの円滑な進行が可能となります。また、目標や方向性を共有することで、チーム全体のモチベーション向上にも寄与します。

リソースの適切な配分のため

システム開発を円滑に進めるためには、各工程への適切なリソース配分が欠かせません。スケジュール管理は、この点においても重要な役割を果たします。

スケジュールによって各作業に必要な期間や納期が明確になれば、それを実現するために必要なリソースを適切に検討できるようになります。例えば、特定の工程に多くの時間が必要だと分かれば、その部分により多くの人員を配置するなどの対応が可能です。

また、計画したスケジュールに対して進捗が滞っている場合、スケジュールを遡ることで詰まっている箇所を特定できるでしょう。これにより、担当者を増やすなど、スピーディなリソース配分の見直しが可能となります。

システム開発のスケジュールの作成・管理の手法

システム開発のスケジュールを効果的に作成・管理するためには、適切な手法を用いることが重要です。ここでは、代表的な2つの手法であるWBS(Work Breakdown Structure)とガントチャートについて詳しく解説します。

WBS

WBSは、システム開発に必要な工程を細分化し、視覚的に整理するリストのことです。この手法は、タスクを端的に可視化することに適しており、プロジェクト管理を強化する上で非常に有効です。

WBSの作成プロセスでは、大きな作業を一つ一つ細かなフェーズに分類し、洗い出していきます。これにより、「何を」「いつ」「誰が」実施するかを明確にすることが可能です。各タスクの内容、期限、担当者が明確になることで、プロジェクト全体の把握が容易になり、進捗管理の精度が向上します。

また、各タスク間の関係性が可視化されることも、WBSの大きなメリットです。これにより、プロジェクトにおいて優先すべき作業を整理でき、チーム全体が同じ方向を向いて作業にあたれるようになります。

ガントチャート

ガントチャートは、タスクの進捗状況の把握を主な目的として使用される図表です。時間を横軸に、タスクを縦軸に配置した棒グラフで表現され、各タスクの開始時期や終了時期、期間を視覚的に把握することができます。

ガントチャートの特徴は、プロジェクト全体の流れを時系列で表現できる点です。これにより、各タスクの進捗状況や、タスク間の依存関係、全体のスケジュールの遅れなどを一目で確認することができます。

効果的なプロジェクト管理のためには、WBSとガントチャートを併用することが望ましいです。

システム開発のスケジュールが変動する要素

システム開発のスケジュールは、以下のような要因によって変動する可能性があります。

  • 作成するシステムの機能
  • サーバーの用意や作業環境などの物理的制約
  • 利害関係者の数

これらの要素を事前に理解し、適切に対応することが、プロジェクトの成功には不可欠です。それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

作成するシステムの機能

開発するシステムの機能の数や難易度、複雑さは、スケジュールに大きな影響を与える要素です。ベースとなるシステムがある場合は開発期間を短縮できる可能性がありますが、逆にゼロからシステムを作る必要がある場合や、複雑な構造を持つシステムの場合は、設計段階から多くの時間を要することになるでしょう。

また、システムの機能の数が増えれば、それに比例して開発に必要な日数も増加します。さらに、機能間の連携部分が多くなることで、トラブルが発生するリスクも高まり、より長期的なスケジュールが必要となる可能性があります。

サーバーの用意や作業環境などの物理的制約

システム開発のスケジュールは、サーバーの準備状況や作業環境といった物理的な制約によっても大きく変動します。例えば、必要なサーバーが不足し、新たに導入が必要になった場合や、その搬送に時間がかかる場合などは、スケジュールが長期化しやすいでしょう。

また、作業環境の確保や移動に時間を要する場合も、スケジュールに影響を与えます。特に、複数の拠点で開発を行う場合や、クライアントとの頻繁な対面ミーティングが必要な場合は、移動時間も考慮に入れなければなりません。

さらに、プロジェクト開始後も、予期せぬ物理的制約が発生する可能性があります。例えば、災害によるサーバーダウンや、予定よりも多くの機材が必要になるなどの突発的な事態により、追加の日数が必要となるケースもあります。

このような物理的制約によるリスクを最小限に抑えるためには、事前の綿密な調査と準備が重要です。必要なハードウェアやソフトウェアの洗い出し、作業環境の確認、バックアップ計画の策定など、様々な角度からのリスク評価を行うことで、より現実的なスケジュールを立てることができます。

利害関係者の数

システム開発プロジェクトには、発注者と開発者だけでなく、多くの利害関係者が関わります。具体的には、ベンダー、発注者企業のシステム部門、機材の販売会社、運搬会社などです。

関係者の数が多くなるほど、日程の調整が複雑になり、スケジュールが長期化しやすくなります。特に、重要な決定を下す際に多くの関係者の承認が必要な場合、その調整に時間がかかることがあります。

システム開発のスケジュールに関するポイント

システム開発のスケジュールを効果的に管理するためのポイントとして、以下の7つの項目を紹介します。

  • 成果物を明確に定める
  • 担当者のスキルやキャパシティを把握する
  • タスクを詳細に分解しておく
  • 定例作業・業務を忘れずに盛り込む
  • クリティカルパスを特定する
  • マイルストーンを設定する
  • トラブルに対するリカバリー策を準備する

それぞれ見ていきましょう。

成果物を明確に定める

システム開発プロジェクトでは、完成したシステムだけでなく、各段階で様々な成果物が生まれます。具体的には、要件定義書、設計書、テスト計画書などです。これらの成果物を明確に定義し、その完成度を事前に決めておくことが、効率的なプロジェクト進行には不可欠です。

成果物の定義が曖昧なままプロジェクトを進めると、様々なリスクが生じる可能性があります。例えば、後工程になって不具合が発生し、大幅な手戻りが必要になったり、逆に十分な品質であるにもかかわらず過度にこだわってしまい、工期が不必要に伸びたりするおそれもあるでしょう。

また、成果物の定義を明確にすることで、進捗の測定も容易になり、スケジュール管理の精度向上にもつながります。

担当者のスキルやキャパシティを把握する

各担当者のスキルやキャパシティは正確に把握しておきましょう。そのうえで、各タスクを時間内に完了できるよう、人材を適切に配置することが、プロジェクトを円滑に進行させるためには大切です。

例えば、難易度の高い作業にスキルが不足している人を担当者として割り当てた場合、成果物の品質が保証できないだけでなく、完成までに予想以上の時間がかかる可能性があります。また、一人の担当者に過度な作業量を割り当てると、品質低下やバーンアウトのリスクが高まります。

スキルギャップがある場合は、事前のトレーニングや、経験豊富な担当者とのペアリングなどの対策を講じることも効果的です。

タスクを詳細に分解しておく

スケジュール作成の際に最も重要なポイントの一つが、タスクの詳細な分解です。大まかなタスク分けだけでは、正確な工数見積もりが困難であり、予期せぬ問題が発生するリスクも高くなります。

また、タスクの詳細な分解は、プロジェクト開始後のタスクの抜け漏れを防ぐ効果もあります。可能な限り細かく分解することで、プロジェクト全体の見通しが立ちやすくなり、後戻りのリスクを最小限に抑えられるでしょう。

定例作業・業務を忘れずに盛り込む

システム開発のスケジュールを立てる際、開発に直接関わるタスクだけでなく、定例作業やルーチン的に発生する業務も忘れずに組み込むことが重要です。これらの作業を見落とすと、予想外の時間的制約が生じ、開発スケジュールに大きな影響を与える可能性があります。

例えば、毎週水曜日にクライアントとの定例会議があり、月曜日には資料作成が必要な場合、これらの時間をあらかじめ確保しておくことで、開発作業への影響を最小限に抑えることができるでしょう。

また、日々のルーチン業務を後回しにすることで、それらが積み重なって膨大な負担となることを防ぐことができます。定例作業や日常業務をスケジュールに適切に組み込むことで、開発チームのストレスを軽減し、長期的なプロジェクトの成功につながります。

クリティカルパスを特定する

クリティカルパスとは、プロジェクト全体の所要時間に直接影響を与える一連のタスク群のことです。これらのタスクは、一つでも遅延するとプロジェクト全体の納期に影響を及ぼすため、事前に特定したうえで、特に注意深く管理する必要があります。

例えば、あるタスクAの開始には別のタスクBの完了が必要で、さらにBの完了には別の部門Cの承認が必要、というように連鎖するタスクがクリティカルパスとなります。この連鎖が多ければ多いほど、プロジェクト全体の所要時間は長くなります。

クリティカルパスの見極めが不十分であった場合、関連するタスクに大きな遅れが生じる可能性もあるため、各タスクの関係性を分析し、優先順位をつけてスケジュールを立てることが大切です。

マイルストーンを設定する

マイルストーンの設定は、システム開発を進行管理するうえで効果的な手法です。

マイルストーンとは、プロジェクトにおける最終的なゴールに対する中間的な到達地点のことです。これを適切に設定することで、プロジェクトの進捗状況を明確に把握し効果的な管理を行うことができます。

マイルストーンに到達するのが予定よりも早ければ全体の進行も順調、逆に遅れていれば全体の進行も遅滞している可能性が高いと判断できるでしょう。これにより、プロジェクト全体の現状を容易に把握し、必要に応じて迅速な対応を取ることが可能になります。

マイルストーンの数や設定するタイミングに決まりはありません。プロジェクトの規模や複雑さ、チームの特性などに応じて、最適なマイルストーンを設定してください。

トラブルに対するリカバリー策を準備する

システム開発プロジェクトでは、作成したスケジュールと実際の進捗状況が乖離することは珍しくありません。そのため、遅れた場合のリカバリー策を事前に準備しておきましょう。

しかし、単純にスケジュールを組み直せば問題が解決するわけではありません。スケジュールの遅れは何らかのトラブルが原因である可能性が高いため、その根本原因を追究し、適切に対応してください。

まとめ

システム開発のスケジュール管理は、プロジェクトの成功に不可欠な要素です。適切なスケジュール管理により、プロジェクトの全体像と進捗を把握し、トラブルに迅速に対応し、関係者間の認識を共有し、リソースを効率的に配分することができます。

スケジュール管理は単なる計画立案ではなく、プロジェクト全体を通じて継続的に行うべき重要な活動です。常に現状を把握し、必要に応じて柔軟に調整を行うことで、より効果的なプロジェクト管理が可能となります。

システム開発のスケジュール管理について、より詳しい情報や専門的なアドバイスが必要な場合は、relationにお問い合わせください。豊富な経験と専門知識を持つ私たちが、お客様のプロジェクトの成功をサポートいたします。

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この記事を書いた人

杉山 隼

ゼネラルマネージャー

sugiyama

IT業界歴20年の自他ともに認めるワーカーホリック。
人生は死ぬまでの暇つぶしをモットーにあまり何も考えずに生きておりますが、大抵のことはどうにかなると学びました。日々、プロジェクト管理や顧客との折衝、見積や商談を行っています。