「DevOps」や「アジャイル開発」は、近年のシステム開発現場で、よく耳にするようになった言葉です。
しかし、この2つの言葉の意味や違いについて、正確には知らないという方も多いのではないでしょうか。使用される場面も似通っているため、混同されることも少なくありません。
そこで本記事では、DevOpsとアジャイル開発の違いを説明したうえで、両者を組み合わせる際の手順やポイントについて詳しく解説します。
目次
DevOpsとアジャイル開発の違い
DevOpsはシステム開発の運用形態に関する概念ですが、アジャイル開発は開発手法の一つです。いずれもシステム開発の効率化に関する文脈で使用されがちですが、根本的に異なる言葉です。
ここでは、DevOpsとアジャイル開発、それぞれの概要について詳しく解説します。
DevOpsとは
DevOpsとは、開発チームを指す「Development」の用語と運用チームを指す「Operations」の用語を掛け合わせた造語です。
開発と運用のチームが協力することで、ユーザーにとって使いやすい製品を作り、ビジネスを成功させることを目指す考え方を指します。
開発チームはニーズにマッチした機能や、新たなニーズを取り込むための新機能の開発・追加を目指します。一方で運用チームは、サービスの安定や、ユーザーの利便性の維持を目指します。このような立場の違いから、両チームの間で摩擦や対立が生じることは少なくありません。
しかし、システム開発の本来の目的は、開発製品を通じてユーザーに価値・体験を提供するとともに、企業価値を向上させることです。そこで、両チームが協力し、共通の目的を達成するために生まれたのが、DevOpsの概念です。
DevOpsのメリットは以下の通りです。
- 開発スピードの向上
- 生産性の向上
- エラーの軽減による安定性・信頼性の向上
アジャイル開発とは
アジャイル開発はソフトウェア開発の手法の一つです。
アジャイルは素早いという意味で、「要件定義→設計→開発→テスト→リリース」という流れを、小さな機能ごとに繰り返しながら開発を進めるのが特徴です。
開発工程を小さなまとまりごとに短期間で繰り返しながらブラッシュアップを進めるため、チームの隔たりを越えたコミュニケーションと、緻密な連携が重要となります。
アジャイル開発には次のようなメリットがあります。
- クライアントの要望を反映しやすい
- 重要な機能から開発できるので、ビジネスチャンスを逃さない
- ユーザーがすぐにシステムに触れるため、認識のズレを防ぎやすい
アジャイル開発は、システム開発の工程を上流から順番に進めていくウォーターフォール開発に比べて、開発期間が長くなる傾向があります。しかし、スピーディかつ柔軟に開発を進められることから、広い分野で活用されています。
devopsとアジャイル開発の関係性
先述の通り、DevOpsは開発プロセスをスムーズに進めるための概念であるのに対し、アジャイル開発はソフトウェア開発の一つの手法であり、根本的に意味が異なります。
しかし、両者が密接な関係にあることも事実です。
DevOpsとアジャイル開発は、どちらも「効率的かつスムーズなシステム開発を実現すること」を目標としており、そのために「チーム間の連携とコミュニケーションが必要不可欠」である点も共通しています。
また、アジャイル開発は、DevOpsの考え方を取り入れることで、より効果的に実践できます。
さらに、DevOpsの考え方の実現にあたっても、アジャイル開発のようなアプローチを含むことが理想的だと言えるでしょう。
このように、DevOpsとアジャイル開発は、密接に関連し、相互補完的な関係にあると言えます。
アジャイル開発とDevOpsを組み合わせる際の手順・ポイント
ここでは、DevOpsとアジャイル開発を効果的に組み合わせるための手順・ポイントとして、以下の3点を紹介します。
- 開発チーム内でアジャイル開発の環境を整える
- 開発・運用チームにDevOpsの考え方を浸透させる
- スムーズな連携のためにツールを選定する
それぞれ見ていきましょう。
開発チーム内でアジャイル開発の環境を整える
アジャイル開発を実現するためには、まず、開発チームにおける環境整備が必要です。
先にあげたように、アジャイル開発は細かな開発工程ごとに短期間でリリースを繰り替えす開発手法です。そのため、各開発プロセス担当者間で、スムーズな連携を可能にする人員配置や連絡手段を整えなければいけません。
このとき、システムやツールを導入するのも効果的です。
各工程を管理するためのプロジェクト管理ツールや、リリース結果や数値、ブラッシュアップのためのアイデアをまとめられるドキュメント管理ツールなどを活用すれば、タスクの正確な管理、メンバー間でのコミュニケーション活性化につながります。
開発・運用チームにDevOpsの考え方を浸透させる
アジャイル開発を実施する体制が整備されていたとしても、DevOpsの考えが浸透していなければ、チームの連携は難しいでしょう。結果として、システム開発の本来の目的である「システム製品を通じた価値の提供」を達成できなくなってしまいます。
そのため、開発・運用チームのメンバー全員がDevOpsの考え方を理解することが大切です。まずはDevOpsの基本的な考え方である以下の4つを意識させましょう。
- Respect：相手を尊敬する
- Trust：相手を信頼する
- Healthy attitude about failure：失敗を責めずに健全な態度を保つ
- Avoiding Blame：相手を非難しない
さらに、自分のチームの業務内容や、サポートを受けたい範囲をお互いに共有しあうことが大切です。相手チームの考え方や目標を共有し、理解することで、対立の解消や効果的な連携につながります。
スムーズな連携のためにツールを選定する
アジャイル開発では、ただでさえ開発チーム内でのデータの管理が煩雑になりやすく、コミュニケーションの頻度も高まります。開発・運用チーム間で連携をとるとなれば、その複雑さはいっそう増すでしょう。
両チーム間でのスムーズな連携を実現するためには、ツールの導入が有効です。DevOpsの実現に有効なツールの一つに「CI/CDツール」があります。「CI/CD」とは、「Continuous Integration/Continuous Delivery」の略称です。
「Continuous Integration」は「継続的インテグレーション」という意味で、システム開発のデプロイ直前までの開発・テストなどの工程を、継続的に自動で実行するメカニズムのことを指します。
「Continuous Delivery」は「継続的デリバリー」という意味で、継続的インテグレーションによってテスト工程まで完了したコードの、本番環境への反映までを行う仕組みのことです。
つまり、「CI/CDツール」とは、開発、テスト、本番環境へのデプロイまでを自動化できるツールを指します。
「CI/CDツール」を導入することで、アジャイル開発の工程をスピーディかつ効率的に進めることができ、コミュニケーションや管理が煩雑になりやすいDevOps体制においても品質を保ちながら円滑な連携を図れるようになります。
まとめ
DevOpsとアジャイル開発の違いや関係性、両者を組み合わせる際の手順・ポイントについて解説しました。
DevOpsは開発プロセスに関する概念・考え方であり、アジャイル開発はソフトウェア開発手法の一つです。このように、両者は根本的に異なるものですが、いずれもシステム開発の効率化とスムーズな運用を目指すという点で共通しています。
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